東京地方裁判所 平成11年(ワ)7016号 判決 1999年7月15日
東京都渋谷区上原三丁目六番一二号
原告
社団法人日本音楽著作権協会
右代表者理事
小野清子
右訴訟代理人弁護士
田中豊
藤原浩
堀井敬一
東京都江東区富岡一丁目二一番一一号
被告
有限会社レイ・コーポレーション
右代表者代表取締役
細川令子
主文
一 被告は、別紙一覧表記載の店舗番号一の店舗において、別紙「カラオケ楽曲リスト」記載の音楽著作物を、次の方法により使用してはならない。
1 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽を再生する方法
2 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽に合わせて顧客又は従業員に歌唱させる方法
二 被告は、別紙一覧表記載の店舗番号二の店舗において、別紙「カラオケ楽曲リスト」記載の音楽著作物を、次の方法により使用してはならない。
1 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させてカラオケ用のビデオコンパクトデイスクに収録されている伴奏音楽及び歌詞の文字表示を再生する方法
2 カラオケ装置を操作し又は顧客に操作させて伴奏音楽に合わせて顧客又は従業員に歌唱させる方法
三 被告は、別紙物件目録(一)及び同(二)記載の各カラオケ関連機器を、別紙一覧表記載の店舗番号一の店舗及び同二の店舗から、それぞれ撤去せよ。
四 被告は、原告に対し、金六〇七万〇四五二円及び内金四九六万六八八〇円に対する平成一一年四月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告は、原告に対し、平成一一年四月一日から被告が別紙一覧表記載の店舗番号一の店舗及び同二の店舗において別紙「カラオケ楽曲リスト」記載の音楽著作物の使用を停止するまで、各店舗ごとに、一か月当たり金一万八九〇〇円の割合による金員を支払え。
六 原告のその余の請求を棄却する。
七 訴訟費用は被告の負担とする。
八 この判決は、第一項、第二項、第四項及び第五項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 原告の請求
一 主文第一項ないし第三項及び第五項同旨
二 被告は、原告に対し、六六四万五二六八円及び内金五五四万一六九六円に対する平成一一年四月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 当事者の主張
一 原告
原告は、別紙「請求の原因」記載のとおり(ただし、「被告株式会社オリエント」及び「被告オリエント」とあるのを、それぞれ「訴外株式会社オリエント」及び「訴外オリエント」と読み替える。)、請求原因事実を主張した。
二 被告
被告は、本件の第一回口頭弁論期日において、請求棄却の判決を求め、原告主張の請求原因事実はすべて認めると述べた。
第三 当裁判所の判断
一 原告主張の請求原因事実については当事者間に争いがなく、被告がその店舗二軒においてカラオケ装置を操作して顧客に歌唱させるなどした行為は、原告が管理する音楽著作物の著作権を侵害するものであると認められる。したがって、原告の差止め及び撤去並びに使用料相当の損害金及び遅延損害金についての損害賠償の請求は、理由がある。
ただし、弁護士費用の請求については、本件の審理の経過に照らし、五〇万円の限度でこれを認めるのが相当である。
二 よって、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六四条ただし書を適用して、主文のとおり判決する(なお、主文第三項及び第七項に係る仮執行宣言の申立てについては、相当でないので、これを付さないこととする。)。
(口頭弁論の終結の日 平成一一年五月二七日)
(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 長谷川浩二 裁判官 中吉徹郎)
<省略>
別紙一覧表
H11.03.31 現在
<省略>
(注1)侵害期間が10年を超える場合は、損害金起算日欄記載の日から10年(120か月)を限度として<1>使用料相当損害金を算定した。
(注2)損害金起算日が月の途中の場合、<1>使用料相当損害金は日割り計算した。
(注3)平成11年4月1日以降の損害月額は、18,900円(税込)である。
(別紙)
物件目録(一)
一 東京都江東区富岡一丁目二一番一一号に存する「パブ&スナックレイ」(看板の表示は「PUB&SNACK REI」)の店舗内に設置された通信カラオケ機器(受信・再生・配信装置)、アンブ、モニターテレビ、マイク、スピーカー等のカラオケ関連機器
(別紙)
物件目録(二)
一 東京都江東区富岡一丁目二一番一一号に存する「ニユーレイ」(看板の表示は「PUB&SNACK ニユーREI」)の店舗内に設置されたビデオCDカラオケ機器、アンブ、モニターテレビ、マイク、スピーカー等のカラオケ関連機器
(別紙)
請求の原因
第一 当事者
一 原告
原告は、「著作権二関スル仲介業務二関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基づき、著作権に関する仲介業務をなすことの許可を受けたわが国唯一の音楽著作権仲介団体であり、内・外国の音楽著作物の著作権者からその著作権の全部又は一部(演奏権、上映権等の支分権)の移転を受けるなどしてこれを管理し(内国著作物についてはその著作権者と著作権信託契約を締結することにより、外国著作物についてはわが国の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互保護管理契約の締結による。)、国内のラジオ・テレビの放送事業者をはじめとして、レコード、映画、出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽の利用者に対して、音楽著作物の利用を許諾し利用者から著作物使用料を徴収して、それを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である。
そして、別紙「カラオケ楽曲リスト」に記載の音楽著作物は、いずれも原告がそれぞれの著作権者から著作権の信託的譲渡を受けてその著作権を管理する音楽著作物(以下、「管理著作物」という。)である。
二 被告らの行為
1 被告有限会社レイ・コーポレーション(以下、「被告レイ・コーポレーション」という。)は、昭和六二年八月六日に、喫茶店、スナック、ナイトクラブの経営等を目的として、東京都江東区富岡一丁目二一番一一号を本店所在地として設立され、同月二七日から右本店所在地において「パブ&スナックレイ」と「ニユーレイ」の社交飲食店を経営する会社であり、その代表者は細川令子である(甲第一号証)。
右被告は、右各店舗の営業開始時より店舗内にカラオケ装置を設置しているが、平成八年三月一四日に後記の被告株式会社オリエントとの間で右両店舗についてカラオケ装置のリース契約を締結し、被告株式会社オリエントからリースを受けたカラオケ装置を右各店舗内に設置している。そして、右被告は、「パブ&スナックレイ」については同月三一日から、また「ニユーレイ」については右契約日の当日から、いずれも原告の利用許諾を受けることなく、カラオケ装置を操作して伴奏音楽を再生して顧客又は従業員に伴奏音楽に合わせて歌唱させ、それを右各店舗に来集した不特定多数の客に聞かせて店の雰囲気作りをして営業上の利益の増大を図っている。
なお、右各店舗の店名の表示は、看板では、「パブ&スナックレイ」が「PUB&SNACK REI」と、「ニユーレイ」は「PUB&SNACKニユーREI」となっている。
2 被告株式会社オリエント(以下、「被告オリエント」という。)は、音響装置設備の設置販売および賃貸等を目的として平成三年三月一日に設立された株式会社であり、平成六年一二月一日に現在の本店所在地である東京都江戸川区西葛西四丁目二番六三号に移転して、江戸川区、墨田区、江東区を主とする周辺地域において、スナック等の社交飲食店に対してカラオケ装置等をリースする、いわゆるカラオケリース事業者である(甲第二号証)。
右被告は、前記1記載のとおり被告レイ・コーポレーションとの間で前記各店舗に関するカラオケ装置のリース契約や通信カラオケについてのカラオケネットワークサービス契約を締結して、右各店舗にカラオケ装置をリースし、また「バブ&スナックレイ」に対してカラオケ用の楽曲データの配信を行っている(甲第三号証、同四号証)。
第二 著作権侵害行為について
一 社交飲食店のカラオケ歌唱について
1 他人の音楽著作物を公に演奏(歌唱を含む)・上映して使用する者は、法律に定める除外規定に該当する場合でないかぎり、その著作物の利用について著作権者の許諾を受けなければならず、著作物利用者が許諾を得ないで著作物を演奏・上映すれば著作権の侵害となるものである(著作権法第二二条、同第二六条、同第六三条)。
2 クラブ、バー、スナック等の社交飲食店において、カラオケ装置を使用して顧客又は店の従業員が歌唱する場合、著作権法上の規律の観点からすると、その歌唱の主体が店の営業主であることは、最三小判昭和六三・三・一五民集四二巻三号一九九頁が判示するところであり、判例・学説上既に確定している。したがって、カラオケ伴奏による歌唱という形で音楽著作物を利用するには、社交飲食店の営業主が著作権者の許諾を受けなければならないのである。
3 本件各店舗に設置されているカラオケ関連機器は、客の歌唱を補助するために楽曲のメロディを再生する機能を有するのみならず、ボーカルメロデイの音量、キーの高さ、伴奏音楽のテンポなど種々の調整をすることができ、歌唱する客の好みや歌唱力に合わせて伴奏音楽を再生することができるものであって、極めて高性能かつ多機能なものであるから、著作権法施行令附則第三条にいう「客に音楽を鑑賞させるための特別の設備」に当たる。したがって、本件各店舗におけるカラオケ伴奏音楽の再生(演奏)については同法附則一四条の適用はなく、カラオケ関連機器を操作して伴奏音楽を再生するという形で音楽著作物を利用するには、社交飲食店の営業主が著作権者の許諾を受けなければならないのである。
4 ビデオデイスクあるいはレーザーデイスク等(これらをビデオグラムという。甲第五号証の著作物使用料規程参照)は二次的著作物である映画に当たるところ、映画に固定された伴奏音楽と歌詞は映画の原著作物に当たる。原著作者(作曲家と作詞家)は、ビデオグラムの利用につき、映画の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有し(著作権法二八条)、結局、上映権を専有するのである(同法二六条二項)。したがって、カラオケ関連機器を操作してビデオグラムに収録されている伴奏音楽と歌詞を再生することは、同法附則一四条の「適法に録音された音楽の著作物の演奏の再生」に該当せず、社交飲食店の営業主は、著作権者の許諾を受けなければ音楽著作物を利用することができないのである。
二 通信カラオケについて
1 科学技術の進歩に伴い、カラオケ関連機器の発展も著しく、通信カラオケと呼ばれるものが今日ではごく一般的なものになっている。通信カラオケとは、音楽著作物(歌詞を含む)をコンピユータ等の記憶装置にデータベースの構成部分として複製し、それを送受信装置を用いて有線送信して利用に供するサービス・システム・機器を総称していう。通信カラオケにより音楽著作物を再生して利用するには、従来のカラオケ装置と同様にマイク、スピーカーあるいはモニターテレビといったもののほかに、端末機と呼ばれる受信・再生用機器を設置することが必要である。
2 通信カラオケには、端末機に高速大容量の磁気記録装置(ハードデイスク)が内蔵されていて、配信された楽曲データを大量に記録することができ、利用の都度ホストコンピユータにアクセスする必要のない「蓄積型」と呼ばれるもの(業務用にはこの型のものが多く利用されている)と、端末機に高速大容量の磁気記録装置が内蔵されておらず、原則として利用の都度ホストコンピユータから楽曲データの配信を受ける必要のある「非蓄積型」と呼ばれるもの(家庭用にはこの型のものが多く利用されている)とがある。
3 蓄積型、非蓄積型のいずれであっても、通信カラオケを利用するには、カラオケ関連機器を買い取りあるいはリースを受けるだけでなく、カラオケ事業者から楽曲データの配信を受けなければならない。そのための利用者とカラオケリース事業者との間の契約が、楽曲データ提供契約であって「カラオケネットワークサービス契約」などと称されている。
三 被告レイ・コーポレーションの著作権侵害行為
被告レイ・コーポレーションは、「バブ&スナックレイ」の店舗内に通信カラオケ装置を、また「ニユーレイ」の店舗内にはビデオCDカラオケ装置をそれぞれ設置して、いずれの店舗においても飲食物を提供するかたわら、原告の利用許諾を受けることなく、カラオケ装置を操作して管理著作物である伴奏音楽を公に再生してそれに合わせて顧客又は従業員に歌唱させ、原告の演奏権を侵害しているだけでなく、「ニユーレイ」ではビデオCDカラオケの再生により原告の上映権をも侵害している。
四 カラオケリース事業者である被告オリエントの著作権侵害行為
1 被告オリエントは、前記第一、二のとおり社交飲食店経営者である被告レイ・コーポレーションとの間でカラオケ装置のリース契約又は通信カラオケについてのカラオケネットワークサービス契約を締結し、本件各店舗に対してカラオケ装置をリースし又は楽曲データの配信をしている。
社交飲食店経営者である被告レイ・コーポレーションの行為が著作権侵害行為に当たることは前記のとおり明らかであるが、管理著作物を無許諾で利用する社交飲食店に対し、カラオケ装置のリース契約又はカラオケネットワークサービス契約に基づき、カラオケ装置又はカラオケ用楽曲データを提供する被告オリエントの行為は、以下のとおり、社交飲食店経営者である被告レイ・コーボレーションの著作権侵害行為に加担するものである。
2 すなわち、カラオケリース事業者が、
<1> 社交飲食店経営者において、原告の許諾を受けずに、リースしたカラオケ装置を使用して管理著作物を再生し、客に歌唱させることを認識しながら、
<2> リース契約に基づき、カラオケ装置又は通信カラオケ楽曲データを提供して、著作権侵害の結果を招来した場合には、
故意による幇助の共同不法行為責任を負わなければならない(大阪高判平成九・二・二七判時一六二四号一三一頁 いわゆる魅留来事件高裁判決は、これと同旨の判断を示した。)。
3 次に、業務用カラオケ装置を社交飲食店にリースした場合において、社交飲食店経営者が原告の許諾を受けないまま当該カラオケ装置を使用して管理著作物を再生し客に歌唱させるときは、当然に原告の著作権を侵害することになるのであるところ、このように著作権侵害の結果が発生する危険の極めて高い業務を日常的に反復し、しかも音楽著作物の存在をその存立の基盤とし、これによって利益を得ているカラオケリース事業者は、その職業ないし社会的地位に照らし、以下に述べる注意義務を負うべきものである。
<1> 社交飲食店経営者とリース契約を締結するに先立って、当該経営者に対し、カラオケ装置をその目的(すなわち、伴奏音楽を再生し、それに合わせて顧客又は従業員に歌唱させる)のために使用するには、原告との間で著作物使用許諾契約を締結する必要がある旨を周知徹底させるべき注意義務がある。
リース事業者においてこの義務に違背して、漫然とリース契約を締結し、著作権侵害の結果を招来した場合には、過失による幇助の共同不法行為責任を負わなければならない。
なお、リース事業者において右の必要性の告知をしたところ、当該経営者が使用許諾契約を締結する意思がないことを表明した場合には、リース事業者はリース契約の締結を拒絶しなければならないのであって、当該経営者に使用許諾契約を締結する意思がないことを知りながら、リース契約を締結し、著作権侵害の結果を招来した場合には、前記2のとおり、故意による共同不法行為責任を負うことになる。
<2> リース契約締結後当該経営者に対する通信カラオケ楽曲データの提供に先立って、原告との間で著作物使用許諾契約を締結したこと又は少なくとも当該経営者が原告に対して右契約締結の申込みをしたことを確実な資料に基づいて確認すべき注意義務がある。
リース事業者においてこの義務に違背して、漫然と楽曲データを提供し、著作権侵害の結果を招来した場合には、過失による幇助の共同不法行為責任を負わなければならない。
なお、リース事業者において右の確認をしたところ、未だに使用許諾契約の締結もその申込みもされていないことが判明した場合には、リース事業者は楽曲データの提供を留保しなければならないのであって、留保しないで著作権侵害の結果を招来した場合には、前記2のとおり、故意による共同不法行為責任を負うことになる。
<3> リース契約を締結し楽曲データの提供を開始した後においても、随時著作物使用許諾契約の有無を確認すべき注意義務がある。
リース事業者においてこの義務に違背して、漫然とカラオケ装置のリース又は楽曲データの提供を継続し、著作権侵害の結果を招来した場合には、過失による幇助の共同不法行為責任を負わなければならない。
なお、リース事業者において右の確認をしたところ、使用許諾契約が解除されるなどして有効な契約が存在しないことが判明した場合には、リース事業者は、リース契約又は楽曲データ提供契約を解除して、カラオケ装置を引き揚げるか楽曲データの提供を停止しなければならないのであって、これらの措置を講ぜずに著作権侵害の結果を継続させた場合には、前記2のとおり、判明後については故意による共同不法行為責任を負うことになる。
4 被告オリエントは、社交飲食店経営者である被告レイ・コーポレーションが本件各店舗において被告オリエントのリースに係るカラオケ装置又は提供に係る楽曲データを使用して、原告の許諾を受けることなく、伴奏音楽を再生し客に歌唱させることを知りながら、カラオケ装置のリース契約又は楽曲データ提供契約に基づき、カラオケ装置又は楽曲データを提供してきたのであるから、社交飲食店経営者である被告レイ・コーポレーションの著作権侵害行為に故意により加担しているものである。
仮に、被告オリエントが無許諾利用の事実を知らなかったとしても、同被告は、前記3の<1>ないし<3>の注意義務のいずれをも怠っていたものであるから、過失による共同不法行為責任を免れることはできない。
よって、被告オリエントは、本件各店舗にカラオケ装置のリース契約又は楽曲データ提供契約に基づき、カラオケ装置又は楽曲データを提供した日以降、社交飲食店経営者である被告レイ・コーポレーションと連帯して原告が被った後記損害を賠償すべき義務を負う。
五 差止請求権
1 原告は、現に著作権を侵害している被告レイ・コーボレーションに対し、著作権法第一一二条一項に基づき、本件各店舗においてカラオケ装置を使用しての管理著作物の演奏(歌唱を含む。)及び上映の差止めを求める権利を有する。
そして、別紙物件目録(一)及び(二)記載の各カラオケ関連機器は、いずれも著作権法第一一二条二項の「もっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具」に該当するから、原告は、同項の「廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置」として、被告レイ・コーポレーションに対し、別紙物件目録(一)及び(二)記載の各カラオケ関連機器の右各店舗からの撤去を求める権利を有する。
2 また、原告は、現に著作権侵害の共同不法行為者である被告オリエントに対し、著作権法第一一二条一項に基づき、本件各店舗についてカラオケ関連機器をリースすること及びカラオケネットワークサービス契約による楽曲データを提供することの差止めを求める権利を有する。
第三 損害について
一 使用料相当損害金
1 被告レイ・コーポレーションについて
原告は、被告レイ・コーポレーションの前記著作権侵害により、次のとおり管理著作物の使用料相当額の損害を被った。すなわち、
原告の管理著作物を利用する者が原告に対して支払うべき使用料は、原告が主務官庁である文化庁の認可を受けて定めた「著作物使用料規程」によるものとされている(著作権二関スル仲介業務二関スル法律第三条)。
右規程によると、本件各店舗のような社交場において管理著作物を演奏等する場合の使用料は、包括的使用許諾契約を結ばない場合には、一曲一回の使用料によるものとされ(第二章、第二節5「社交場における演奏等」)、カラオケ伴奏による歌唱が行われる場合の一曲一回の使用料は、各業種に適用される別表15から別表18までに定める生演奏の使用料とするとされている(同備考<17>)。そして、本件各店舗の営業形態には、別表15が適用となる(甲第五号証)。
右規程の定めるところにより被告レイ・コーポレーションの各店舗の使用料相当額の損害を算定すると、店舗ごとに別紙一覧表の使用料相当損害金合計欄記載の金額のとおりとなる。
2 被告オリエントについて
被告オリエントは、前記第一、二のとおり、各店舗に対するカラオケ装置のリース及びカラオケネットワークサーゼス契約による楽曲データの提供によって共同不法行為者となっている。
したがって、被告オリエントは、各店舗におけるカラオケ装置のリース又は楽曲データの提供開始後について、各店舗での使用料相当損害金額を被告レイ・コーポレーションと連帯して支払う義務がある。その金額は、別紙一覧表の使用料相当損害金合計欄記載の金額である。
3 別紙一覧表記載一及び二の各店舗については、平成一一年四月一日以降も、管理著作物の使用が停止されるまで原告に一か月当たり各金一万八九〇〇円の割合による損害が発生する。
二 遅延損害金
被告らの著作権侵害行為による使用料相当損害金は、不法行為による債務であるから侵害行為の日から遅滞に陥るが、訴訟提起までの遅延損害金を算定すると、各被告について店舗ごとに別紙一覧表の遅延損害金欄記載の金額となる。なお、被告両名は、各店舗について被告オリエントの支払うべき金額の範囲で連帯して支払う義務がある。
三 弁護士費用
原告は本件訴訟提起を弁護士に依頼せざるを得なかったが、その費用の相当額は、本件訴訟物(差止請求、損害賠償請求、将来請求)の価額の合計額の二割を下回ることはない。なお、別紙一覧表の弁護士費用欄記載のとおりであるところ、被告両名は、各店舗について被告オリエントの支払うべき金額の範囲で連帯して支払う義務がある。
第四 結論
よって、原告は、被告レイ・コーポレーションに対しては、著作権法第一一二条一項に基づき本件各店舗における管理著作物の使用の差止めと同条二項に基づき著作権侵害行為に供された機械又は器具である別紙物件目録各記載のカラオケ関連機器の本件各店舗からの撤去を求め、被告オリエントに対しては、同条一項に基づき本件各店舗へのカラオケ装置のリース及び楽曲データの提供の禁止を求めるとともに、各被告に対して、不法行為による損害賠償として請求の趣旨記載の各金員(将来請求を含む。)の支払を求めるものである。